遺言書なんて書かなくても大丈夫と思っているあなた(私もそう考えたことがあります)に、遺言書の作成はなぜ必要なのか、 遺言書を特に書いておく必要があるときは、どんなときなのかを説明したいとおもいます。
遺言書について調べてみると、ほとんどが遺言書を作りなさいというようなことが書いてあります。私も遺言書は、作成するべきだとは思いますが、
あまり必要ない場合もあるんじゃないかなぁと思い考えてみました。
例として、家族が奥さんだけで、子もおらず、父母は亡くなっており、自分に兄弟姉妹もいない場合などは、法定相続人は奥さんだけなので、
自動的に奥さんが全ての財産を相続することになります。
このケースなら大丈夫かなぁと少し思いましたが、やはり不安は残ります。
私が思いついた不安として、昔交際していた女性との間に自分も知らない子供がいた場合です。自分が死んでしまったあと、 万が一この子供から認知の訴えを起こされて認められてしまうと、この子供にも相続分が発生し遺産の2分の1がこの子供に相続されてしまいます。 遺言書を残しても、奥さんの相続分を全て守ることはできませんが、すべて奥さんに財産を相続させると書いておけば、 子供は遺留分として、4分の1の遺産を受け取ることに留まります。
もう一つ私が思いついた不安は、まずありえないとは思いますが、自分でも分からない兄弟姉妹がいたという場合です。 戸籍をたどっていったら自分の知らない半血兄弟がいたという場合です。 この場合遺言書で奥さんに全て財産を相続させると書いておけば、兄弟姉妹には遺留分がありませんから、奥さんに財産を全て残すことができます。
考えれば万が一という場合は、まだあるのでしょう。こうなるとやはり遺言書は作成しておけば安心だということになってしまいます。
万が一のことを考えて、残された家族のことを考えてぜひ遺言書を作ってください。
自筆証書遺言であれば、本屋さんに行って遺言書の本を買ってじっくり読めば、あまり費用をかけずに 遺言書の作成はできると思います。
ただし書き方を間違えると無効になります。しっかり勉強してください。
アドバイスとして、相続人はだれになるのか、自分の財産はどれだけあるのか、遺留分を侵害していないかなどもしっかり考えてください。
そして最後に、書式や内容について、一定の条件を満たしているか必ず確認してください。
遺言書を特に書いておいていたほうが良い場合をリストにしてみました。
最初の子供がいない夫婦で配偶者に全財産を相続させたい場合ですが、仮に今ある全財産が2000万円で、
その内訳が、家と土地で1600万円、預金で400万円だとしましょう。
遺言書がない場合で、相続人が妻(配偶者)と父母(直系尊属)の場合、
法定相続分は、妻3分の2、父母3分の1なので、妻が約1333万円、父母が約667万円になります。遺産分割協議になったときに、
家と土地は分割するわけにはいかないし(共有にするという手もありますが、これはお勧めしません)預金も400万円しかない。さぁ、どうしようとなってしまいます。
父母が、「息子の財産は、妻であるあなたが全て相続しなさい」と言ってくれるか、「私たちは預金のうち200万円だけでいいよ」とか言ってくれれば良いのですが、
もし相続分はきっちりもらいますということになれば、妻は、夫の遺産に預金が400万円しかないので、足りない267万円を用意しなければ、
家と土地を売ってその分を用意しなければならなくなるかもしれません。
さすがに父母が息子の嫁にそんな無慈悲なことはしないでしょうが可能性はあります。遺言書に全財産を妻に相続させると書いておけば、
万が一父母から遺留分減殺請求をうけても、父母(直系尊属)の遺留分は6分の1なので、約333万円引き渡せばよく、少なくとも家と土地は守れます。
法的効果はありませんが、遺言書に遺留分減殺請求をしないで欲しいと書いておけば、
息子の最後の願いでもあるので、遺留分を主張される可能性はかなり少なくなるのではないでしょうか。
相続人が妻と兄弟姉妹の場合で、兄弟姉妹の仲が悪い場合は絶対に遺言書を書いておくべきだと思います。遺産が上記の例と一緒の場合、法定相続分は、 妻が4分の3で1500万円、兄弟姉妹が4分の1で500万円になります。もし兄弟姉妹に相続分を主張されると、遺産から500万円兄弟姉妹が取得することになり、 預金が400万円しかないので、最悪妻は、家と土地を処分することになるかもしれません。遺言書に妻に全財産を相続させると書いておけば、 兄弟姉妹には遺留分がないので、妻が全財産を相続できます。
内縁関係の場合、法律上の婚姻関係にないので、相続権がありません。よって内縁関係の相手に財産を残したい場合は、遺言書を書くことが必要です。
相続権のない人、例えば、病気になってから献身的に介護をしてくれた、息子の配偶者や、相続人にならない仲の良い兄弟姉妹などに財産を譲りたい場合にも、
遺言書が必要です。どちらの場合にも遺留分には気をつける必要があります。
事業の後継者の指定を遺言書でしても法的効力はありませんが、自分が生きているうちに後継者を話し合って決めておき、
事業に必要な財産を後継者に相続させるよう遺言書に書いておくことは必要です。もちろん他の相続人に、預金などを相続させるなどの配慮は必要です。
法人であれば、自分の持っている株式を、すべて後継者に相続させる遺言書は作成しておくべきです。もし遺言がなく、遺産分割協議でもめて、
株式を分散して相続してしまうと、経営が安定しなくなってしまいます。
相続人が多い場合、遺言書がないと、遺産分割協議で意見がまとまらず、相続人間の仲が不仲になってしまい、訴訟に発展してしまうことがあるかもしれません。 このような悲しいことが起こらないように遺言書は作成しておくべきでしょう。
遺言の方式は大きく分けて普通方式と特別方式があります。普通方式として、自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言があり、 特別方式として、危急時遺言(臨終遺言)と隔絶地遺言があります。一般的には普通方式で作成されることが多いです。
普通方式について簡単に説明すると、作成方法は、自筆証書遺言は、本人が自筆で作成します。公正証書遺言は、公証人が原案を元に作成します。
秘密証書遺言は本人が作成しますが、自筆証書遺言と違い代筆・ワープロでも可とされていますが、署名は自筆でする必要があります。
費用は、自筆証書遺言が一番費用がかからず、次に秘密証書遺言が費用がかからず、公正証書遺言が一番費用がかかります。ただし、公正証書遺言は、
公証人が作成するので、間違いなく法的に正しい書式で遺言書を作成することができます。内容が改ざんされるおそれがなく、
家庭裁判所の検認の手続きが必要ありません。普通方式について、簡単に表にまとめてみました。
種類 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
---|---|---|---|
作成方法 | 本人の自筆 | 公証人が作成 | 本人の自筆、代筆、ワープロ ただし署名は自筆で |
証人 | 不要 | 2人以上の証人立会い | 2人以上の証人と公証人 |
費用 | ほとんどかからない | 作成手数料 | 公証人の手数料 |
署名・押印 | ともに必要。押印は実印、認印、拇印のいずれも可 ※実印をお勧めします。 |
本人、証人、公証人の署名・押印が必要 | 本人(遺言書・封印に署名・押印)、証人・公証人(封書に署名・押印) |
封印 | 不要 | 不要 | 必要 |
メリット | 証人が不要で、利用しやすく、費用がほとんどかからない。 | 遺言の内容が明確であって、検認を要しない。改ざんのおそれがない。 | 遺言の存在を明確にできる。遺言内容を秘密にできる。 |
デメリット | 方式、内容によっては無効になる可能性もある。死後発見されなかったり、紛失・改ざんのおそれがある。検認が要求される。 | 手続きが複雑で費用がかかる。遺言の内容が証人から漏れるおそれがある。 | 方式、内容によっては無効になる可能性もある。費用がかかる。検認が必要。 |
遺言書を書いてみようと思った方は、本やインターネットなどできっちり調べて作成してください。
もし、遺言書を書きたいけど、調べるのが面倒だと思われる方や、遺言書の作成・指導をして欲しいという方は、当事務所にご相談ください。
初回相談料は無料となっております。ぜひご利用ください。